久しぶりに大道さんの撮影。
ずっと作りたかった『襲(かさね)』の黒バージョン『玄襲(くろかさね)』がほぼできあがったので、襲と同じアングルで撮ってもらいました。
大道さんもアシスタントの新村さんもお元気そうでよかった、楽しい撮影。気がつけば5時間があっという間に過ぎていました。1作品にこんなに真剣に取り組んでくださる大道さん、頭が下がります。
『襲』が『玄襲』という言葉になった途端、襲われる感がなんだか増えたように思うのはわたしだけでしょうか。玄が襲いかかってくる〜。
漢字の「黒」も「玄」もどちらも黒色を表しています。ところがこの2つには違いがあります。「黒」は下のレンガ(火の偏である4つの点)が火を表し、その炎から立ち上った煤で煙出しが黒くなっている様子が漢字の成り立ちだそうです。
対する「玄」の「幺」の部分はねじった糸束を表し、その上に横棒を渡して、つるしているようなイメージで「白い糸を黒に染色している様子」を表しているそうです。そして、垂らされた黒い糸の隙間から向こう側の世界を見る。そこには見る人によって抽象にされた世界が広がっているのかもしれません。中国の水墨画の世界は、この玄の世界なのだと思います。そんなわけで「黒」は物理現象による黒色、「玄」は精神世界をも含んだ黒です。
なので漆の黒も「黒」ではなく「玄」でいきたい。
『玄襲』は漆の黒色の世界の豊かさと奥深さを表しています。
Savoir-Faire des Takumiプロジェクトのために作った『Entropy』も漆黒の凹凸レンズのような物体なのですが、同じ漆の黒でも凹面と凸面では異なった黒に見えます。というのも裏テーマでした。