この一か月というもの、消化するのが大変なほど毎日たくさんの個性豊かな素晴らしい方々に個展にご来場いただき、新たな出会いにも恵まれたありがたーい日々でした。
そして平成とともに終わる予定だったのですが、好評につき令和になっても会期延長していただいております。15日までです。
※一部展示は終了とさせていただきます。
写真は〈茶会ヤミヨノウルシ〉の記録です。
先生方、大切な友人たち、ヴィラ九条山に滞在中のフランス人アーティスト御一行様まで来てくださったりと定員の何倍ものご希望をいただきました。席数も増やしはしたのですが、お待たせしてしまったり数々の至らぬ点がありましたこと、何卒ご容赦いただけますと幸いです。
茶筅を振り続けてくださった茶人の大久保さん、この茶会のためにわざわざ『陰翳礼讃』を読み込み、羊羹を作ってくださった鍵甚の雄ちゃん、本当にありがとうございました。
暗がりの中で重箱の内側の漆黒に、そしてまた漆黒のお皿の上へと黒糖羊羹が融けこんでしまう様は、不思議の国のようでした。暗がりで食べる羊羹は、口へ運んだ瞬間黒糖がぱっと匂いたち、そして感覚の主役となった味覚が羊羹に襲いかかる、ぐらいのインパクトある美味しさでした。
「〜だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。」この谷崎の言葉は本当でした。もちろん雄ちゃんの羊羹は元々旨いに間違いはありません。でも、これにてわたしの二十年も抱いてきた疑問が解決いたしました。感謝です。まだまだ『陰翳礼讃』の世界は遠い遠いところだった、と数々の反省もありますが、大変勉強になりました。
ともあれ、ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。