MESSAGE absence-presence

この作品は、Savoir-faire des Takumi プロジェクトのために作られました。フランス人アーティストのアナイス・ゲイリーとのコラボレーションにおいて、コンセプトを共有しながら個々に制作に取り組んだものになります。

Savoir-faire des Takumi 2021
Introducing Yohko Toda Yoshikawa urushi artist and her work in collaboration with A.guery

2020年、人々は大切な人達にもた易く会いづらい状況を経験した。しばらくはこのような時が続くだろう。私たちは彼らの不在を思う。戸田は、大切な人へのメッセージを内包するためのカプセルを作った。書き手によってとどめられた言葉は、痕跡でもある。それらは貝によって封印されたり、木と木を繋ぎあわせ、また人と人を繋ぎとめる象徴ともなる<かすがい>をモチーフとした金の粒で留められる。ゲイリーは家族らが纏っていた古い衣服を集め<記憶>としての素材を作った。藍で染めてからすべてを完全に紐解直す。それらのパーツは再縫合され、不規則と調和は新しい一つのコンポジションを作りあげた。かつて糸の通されていた穴や、藍に染まらなかった隠れていた部分があらわになり、かつて身に纏っていた人物の痕跡が見えてくる。

In 2020, people all over experienced difficult times where they simply could not meet with their beloved ones. They felt their absence and sought traces of their presence through objects. As this period will continue for some time, the two artists, Yohko Toda and Anaïs Guery want to create pieces that connect people through time and space. Yohko creates a series of Japanese lacquered capsules containing a message letter. The handwritten words of the writer are also traces of that person.Each capsule is sealed by shell details and fastened with gold pieces with a”kasugai”motif, an element that usually connects wood to wood but here symbolizes the connection between people. Anaïs creates ‘memento’ material with used garments taken here and there from her own family. Dyed with indigo and completely unstitched, these fragments are re-assembled as a new composite material, irregular yet harmonious, showing holes and un-dyed details standing for visible traces of their absent owners.

2017年に作ったメッセージカプセルという手紙を入れて贈る文筒を、コロナ禍において容易く人に会えないという状況の中で再び作ろうと思いました。
ダイレクトに‘me-you’ ’繋’ ’Co-nnect’ などの文字を螺鈿で入れて、厚貝を留金のようにして封をする黒漆のシリーズと、人と人を繋ぎ合わせるかすがいのモチーフを蒔絵や金の平目粉で施した朱漆のシリーズ、そしてざらざらとした少し現代的な雰囲気の質感に仕上げた黒漆のシリーズがあります。
当初は、今現在生きているけれどもすぐには会えない大切な人にメッセージを贈るもの、と思って作っていたのですが、それらは私の手の中で飛躍し、漆の宇宙的な色、古から連綿と受け継がれてきた神秘的な質感と相まって、時空を超えて今現在もうこの世には存在しない誰かにも届けるものであってほしいとの思いを抱くようになりました。
手紙でなくても思いや何かその人にとって大切なものを中に入れて、過去と現在と未来、人と人を繋ぐ「カプセル」、過去past-未来futureを結ぶ直線と、それと直行する、you-meとか母-子とかを結ぶ直線のちょうど交点に、これらの「カプセル」が在る。
カプセルを開けて中のものを取り出すことは、ある時間や関係が終わり、そこからまた新たな時間や関係が始まることを、カプセルを閉じることは、時の移ろいに身をゆだねながらも、いま・ここ・この関係を留めようと願うことを象徴しているのです。

  • Yohko Toda