idea
Feb 16, 2020

床に転がっていた森美術館の「シンプルなかたち展」の図録の表紙にふと目が留まった。
ハンス・アルプ(Hans Arp,1886-1966)の『鳥』という石の彫刻。黒くて、パッと見、漆のようにも見える。あ、でも、と思う。この物体はどれほど奥へいこうが石の(鉱物の)組成だ。あちら側に突き抜けるまでいったって、そこまではずっと石の組成なんだ。漆だったら表面でしかない。内側は木だったり、布だったり、違うもの。表面の膜でしかない漆。石の揺るぎない物質感に比べれば所詮表面でしかないのか、と少しがっかりもする。
でも、その膜によって内部まで変容したかのような錯覚をも起こさせる漆。そこに目を向けると、脆弱なようでいて、面白い性質が見えてくるんじゃないだろうか。