典雅堂の表具師水島さんと打ち合わせ。
漆の映像作品『figure』を映すための白紙の掛け軸を作ってもらうのです。わたしも漆を塗った布など持参。
表装の世界は全く未知でしたが、いや未知のままですが、きれいな紙やら、美しい布やら、なんだかとても柔らかい世界でした。そういえば水島さんも柔和な方です。
でも、マテリアルに変化をもたせるため銀箔をご自身で硫化してたくさんの色味を作られたりと、色々と熱心に研究されています。お軸にはいくつも要素があって、一文字とか、軸先とか、地とか、コーディネートのようにあれこれ考えるのは愉しい~。
わたしは、絵といえば額に入れて壁に飾るもの、という感覚で育っている現代日本庶民です。そんなわたしにとって、掛け軸という完成されたフォーマットができあがるまでの歴史の中の変遷や精神活動はどんなだったのだろう、と思うとすごくわくわくして、もはやエキゾチシズムぐらいの距離感で興味をひかれます。
絵をくるくる巻いて持ち運べるなんて!とか、ほどけば完全に平面布地へと戻る着物の発想と同じ思考回路で作られてる!当たり前か、とか、風帯を生み出した美意識はなんぞやとか、色んな思いがぐるぐる嵐のように巻き起こってぽーっとなりました。
ちょっと調べたら最初の起源はやはり中国で、仏画などを掛けて拝むためのものだったそうです。コーカサスやアフガニスタンの山岳民族が掛ける、拝む対象としての織物を思い出しました。
そして完成した見事なこの掛け軸というシステムに、ははーっと改めて感動しました。
自身のDNAの中に眠っている記憶が、やっぱこれだろっと呼応していました。
漆のお軸、いや、お軸のスクリーン?どんななるかなー。
あ、そういえば、の話です。
柴田是真という江戸後期〜明治期に活躍した漆界の巨人がいます。
水島さんによると、是真の漆絵の軸は、巻いても漆部分がバキバキには割れないらしく、そこで真贋を見極めたりするそうです。(漆は乾くと柔軟性はほとんどなく、曲げれば普通割れてしまいます。特に日本産。東南アジア方面の漆はゴム質が多く、多少柔軟性があるようです)
軸装する必要があった時代の漆絵には、巻くことで湾曲させられても大丈夫なように、何かしらの技術があったのかもしれません。それが是真独自のものか、それとも漆業界に確立されていたものかはわからないけれど…。漆関係の書籍あたってもそんなことは載っていないし、是真関係の研究を探せばいいのかな。何かご存知の方があれば教えてください。あ、別にわたしは漆絵をするわけではないのですが。