re urushi

trial no.1-15
材料:漆の樹液、濾し綿、紐、糸、朱漆

京都現代美術館・何必館キュレーター/アートディレクターである梶川由紀さんが立ち上げたブランドthe editとのコラボレーションワーク

ー漆工芸が生まれる時に出される、廃材に光をあてて再生する re urushi プロジェクトですー

漆というのは漆樹の樹液です。樹の血液や体液のようなもので、木の幹に一筋一筋傷をつけ、滴る1滴1滴を集めます。1本の樹から採取できる漆はわずか200g、 採取し尽くした漆の樹は「掻き殺し」と呼ぶように伐採します。漆掻きの職人さん達は樹に向かって手を合わせて感謝します。

集められた漆の樹液には樹の皮や虫などさまざまなものが含まれ豊かな自然そのものです。これを人間にとっての美しいものにするために「濾す」という作業をします。不純物をとりのぞき滑らかで艶やかな液体へ。こうして樹液から工芸材料となるのです。まさに<人の手を加える><artificial>→<art>の宿る場。そう考えると、この作品の素材となっている濾し綿は、自然と人間のはざまのような存在にも思えます。目を凝らせば、樹の皮も虫もどこかにくっついているかもしれません。
漆という素材を初めて見つけ出した石器時代の人々は、接着剤として用いました。ただ石斧の石と木をくっつけるために、その辺の樹の樹液をペッとつける。そんな大らかな原初の漆と人間の姿を忘れないでいたいと思います。たっぷり漆を吸い込んだ濾し綿には、the editのブランドモチーフである赤い糸を纏わせました。

濾し綿:堤淺吉漆店

  • Yohko Toda