漆業界でも、耳障りのいい、サスティナビリティとか優しさ暖かさばかりがマーケティングのためにアピールされることには少し苛立ちを覚えます。
もちろん地球環境、温暖化問題を解決するために必要であることには異論はありません。

でも漆樹の血であり体液である漆をとるために樹に傷をつけ、終いには掻き殺すという行為は実は禍々しいもの。
薄っぺらな一面的な見方は嫌なのです。人間が生きるために他の生物にいかに依存してるのか、他の生物を犠牲にした上に生きているのか。そして共存させてもらってるか。自分の中の細菌たち含めて。
綿花だって野菜だって動物を食べていることだって何だってそう。その他者の痛みの円環の上に自身の生活が成り立っていることを自覚して引き受けることの大切さを思う。

土でできている陶磁器の茶碗つまり生物の死骸で私たちは茶を喫し、樹の血で塗られたお椀で味噌汁を啜ってる。
でもそう思うと、私たちは独りじゃない。

時の流れが速すぎて、クリスマスツリーもお正月飾りも出すのを忘れていた年末年始。
遅ればせながらあけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

金曜の夜は『12cmの世界展』のオープニングに行きました。
12cmの世界なので、12cmの正方形の作品という規定です。お誘いいただいてから、何を作ったらいいかなあと出すか出さないか迷っていました。
そうしたら、昨年最後のお仕事であるオノマトペマッププジェクトのサンプルがすべて12cmの正方形、これぞ12cmの世界だった!と気づいた。11cmでもなく13cmでもなく、12cmちょうど!小さな偶然に嬉しくなって、出品することにしたのです。
ちょうど余りも数枚あった笑。それを漆質感サンプルの中で一番気に入っていた「ちぢみーしわっちわ」に塗り直しました。新年から「しわっちわ」もなーと思い、タイトルは変えましたけど。

そういう訳で大阪中之島、京都にはない水とネオンの光にちょっと心踊る。そんな夜でした。

寝る前に物語の世界に没入したくて、娘の本棚から『大草原の小さな家』。
ローラ・インガルス・ワイルダーは65歳の時に初めてペンをとり、幼い頃の思い出を元にこの壮大なシリーズを書き始めたというからびっくりする。肌を撫でる風の香り、雲の動き、空の表情、大地の見せる様々な色、小さな動物たちの気配や物音、オオカミの息づかい、かあさんの夕ごはんの支度の匂い、暖炉のちらちらと揺れる明かり。
65歳になったときにこんなに細部まで生き生きと思い起こせるなんて、人間てすごいな。
わたしは何を記憶の奥深くしまえてるだろう。

今年は一日一日丁寧に生きたいと思います。