Entropy1

work
Nov 05, 2019

Savoir-Faire des Takumiプロジェクトのための作品『Entropy』制作中。

表面にヘラでキリコ(漆と土の粉類のペースト)をつけてゆく。
一足一足山を登るように、一ヘラ一ヘラ未だ塗っていないところを埋めてゆく。
山登りは好きじゃない。でも大きなものを作るのは肉体労働に近いから好きだ。

虚構を作ることが生業の脳内労働者のダンナにすらてめえは観念的すぎると貶められるわたしにとって、漆の作業はまごうことのない「体験」だ。遠い遠い遥か古の人々と同じ漆の匂いを嗅ぎ、トロリとしたとらえどころのない液状の漆をあつかい、その神秘の艶に心躍らせる。

ほんの少し、ほんとうに少しずつしか進まない、でも確たる歩み。こんな間違いのないものはない。馬鹿馬鹿しいぐらい遅々として、現代のスピードとかけ離れ過ぎてるところに価値がある。

だから頭でっかちのわたしは、一ヘラ一ヘラ漆を置いていく。この手でもって。作業が終わったら、筋肉が礼儀正しく疲労していることが嬉しい。

歯医者では、顎の筋肉が前回より発達してますが何か思い悩んで噛みしめてませんかと指摘され、はたまた胸筋が増えたらしく胸も1カップぐらい大きくなった笑。仕事が身体に現れるなんて勲章みたいだとほくそ笑む。

あと私を実体に繋ぎとめてくれるのは、私の身体から生まれ落ちた柔らかな娘のほっぺに頬ずりしている時と、それから、あれかな。

「物理・知覚・感性の対応付けに基づく実社会の多様な質感情報表現」について研究されている電通大の坂本真樹教授の『オノマトペマッププロジェクトVer.漆』に関わらせていただいています。オノマトペセット、インタビューテキストともに無事完成できてうれしいうれしい。
「質感」を言葉で表すときに使用するのが「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)」だそうです。漆の質感表現については常日頃から考えてる。でも今回、多様な漆の質感のオノマトペ化を試みることは、より質感に迫ろうとする作業でした。大変微細な質感の違いを表すには、言語感覚における表現力が必要で、あーもっと来い来い表現力、と嘆きつつ。とはいえ、言葉で表しきれない違いを表現するのがヴィジュアルで勝負しているわたしたちの仕事なのかもしれないとも思うのです。質感と言葉の追いかけっこをしているようでした。
蒔絵と高蒔絵のサンプルにはオノマトペロゴを蒔絵化してみました。これがとても素敵なデザインで、優美な曲線が金蒔絵とひき立てあい、金を磨くのが愉しかった。
それから気に入っているのが、ちぢみ。漆は厚く塗りすぎると表面が縮んでしまうという特質があります。仕事としては、あー、厚く塗りすぎて縮んじゃった研ぎ直しの塗り直し、ということになるのですが、この縮みを今回はあえて質感表現として加えてみました。がっつりかっこよく縮んでくれた!
マップという形式ですので、紙媒体にまとめられて、12月に発表だそうです。また、学会でも発表されるそうで、楽しみです!

Kyoto←Paris

work
Jun 16, 2019

 パリより帰ってきました。すでに2週間経ってしまいました。
 本当にぱんっぱんになった頭のスーツケースにグイグイ体重かけて閉めて帰ってきたような状態だったのです。頭に隙間=余白=遊びがないと「わたし」として何も考えられない。師匠もダンナも、忘れないとダメなんだよと折りに触れ同じこと言うなあと思ってたけれど、今回はそれを実感。2週間かかってやっと色々と忘れることができたようです。そして、その中で鮮やかに立ち昇ってきたものも・・・。

 
 ここ2週間ずっと考えていた、作品の構想。(このプロジェクトは作品を12月頭までに仕上げなくてはならないのです)
 パリでプロジェクトが始まってすぐの各々のプレゼンの後、まだ頭の整理もつかないままに思いついて提案してしまったアイデアは、漆の「時間」というものに一度向き合いたいという思いから「経年の変化」だった。コラボレーションパートナーになったのはIndigo(藍)を使うデザイナーの Anaïs、作品と同じ目の色をした透明感ある素敵な女の子。Balenciaga、ChristianDior、Cacharelと華やかなグランメゾンを経て、その商業ベースの世界からアート方向へと転換するべく自身のブランドを立ち上げたという。
 藍も漆もどちらも美しさのためだけでなく、素地を守るために施される膜である、と二人で話し合った。時とともにその層が剥がれ落ちてゆくという現象。そこをテーマにしたかった。

 わたしは「時を集める」ようにまず古い漆器を集めようと思い、帰国してすぐに収集を始めた。それらのかけらで作品を作ろうと考えていた。ところが集まってきた物を眺めながら、一体これが自分の今まで作ってきたものとどうやって繋がるの?唐突すぎない?訳わからない?漆器の妖怪作る気か?(『おわんない』て「お椀」と「終わらない」をかけたタイトルまで考えてみた笑)とかちょっとこれでは収拾がつかないぞと思い始めた。うまくいかなかったら、賛同してくれたAnaïsにも申し訳ない。そんなあやふやなもの作りたくない。

 そんなことを悶々と考え続けてるうちに、パリで見たもの経験したものその他諸々を忘れていったらしい。(でも、たぶんどっかにはある、必要な時には出てきてくれると願いたい)
 そのうち自分の中で立ち昇ってきたのは、Galerie Thaddaeus Ropacで見たDonald Juddの一連の作品。今までまとまった状態で見たことはなく、ミニマリストという認識しかなかったのだけれど、こんなに美しいとは知らなかった。計算し尽くされ研ぎ澄まされた表面。そして視覚効果。舐めるように見てたらAnaïsもわたしもギャラリストに注意された。触れると表面状態が変わってしまう、作品の存在価値および視覚効果に影響が出るからとか言ってたかな。この展覧会のキュレーションをしたJuddの息子さんに厳しく言われてるからとのこと。虫とかきたら大変だね、とAnaïs、ほんと、ちょっと虫の糞ぽいのついてたけど。アルマイト(陽極酸化処理した表面)がどうのこうのから長々と説明してくれたのだけど、込み入ったフランス語をちゃんと理解できなかったのが今になってとても残念。今度Anaïsに尋ねよう。
 そして、Thadaeus Ropacのことを教えてくれた方とその後やりとりをする中で、とても大切なことに気づかせてもらったのです。だけど大切なので心に秘めておきます。
 そんなこんなで悶々を抜け出しました。まだどうなることやらわからないけど、ちょっと光が見えたような。まだまだ創作の悩みは尽きないけれど、古い漆器とJudd、そんなとこが今、今回のパリ後にわたしの中で熱くなっております。何の脈絡もないそれらが、わたしの中で繋がったようです。

Kyoto→Paris

work
May 25, 2019

こちらの京都市とパリ市共同プロジェクトに参加するため出発します。
ミニマムで美しい昨年のリーフレットのロゴ&デザインはわたしのロゴやDMを作ってくださっている塩谷さんがされたそうで、さすが。よし、わたしもがんばらねばー。

→  Savoir-faire des Takumi project

「Savoir-faire des Takumi」は、京都市・パリ市の職人やアーティストたちが互いに交流し、それぞれの文化や技術からインスピレーションを受けながら、世界のアート市場に向けた、新しい作品の創作等をサポートするプロジェクトです。

“Savoir-faire des Takumi” is a collaborative project to support artists and artisans from Kyoto and Paris, where they can interact and create new works geared towards the global art market while gaining inspiration through each other’s culture and techniques.

主催:京都市、パリ市、アトリエ・ド・パリ 協力:文化庁 地域文化創生本部、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、アトリエ・ダール・ドゥ・フランス
特別協力:株式会社髙島屋 事務局 : 京ものアート市場開拓支援事業事務局(コンソーシアム 株式会社ジェイアール東日本企画 / 株式会社TCI研究所)
Organizers : City of Kyoto / City of Paris / Ateliers de Paris Partners : Agency for Cultural Affairs, Government of Japan / Kyoto Art Center / Ateliers d’Art de France
Supporter : Takashimaya Co., Ltd. Managing Office : Kyo-mono Art Market Development Support Project Managing Office(Consortium between East Japan Marketing &
Communications,Inc. and TCI Laboratory, Co., Ltd.)

ほとんど人の目に触れることのない、未だ液体状態の漆の姿を映像に収めた拙作『figure』、これに青木さんに音楽をつけてもらいたいなーと半年ほど前から思っていた。
青木さんはパリ、ベルリンを経て今は大阪ベースで活動されている、エレクトロミュージックの分野で世界的に知られる方だ。
お正月過ぎにぼんやりインスタグラムを見ていたら、友人が八日戎に行きました―という楽しそうな投稿が流れてきた。赤ちょうちんのぶら下がるネオレトロ?な飲食スペースでDJがプレイしている。「DJの青木君に会いました」と書いてあったので、DJの青木くん?でも、これはきっと違うDJの青木くんであろう、と思っていたらハッシュタグにaokitakamasaとあってびっくり。えびすさまに福をいただいたような気持ちで、すぐ友人にメールをしてみたら快く紹介してくれたのでした。

そして先日心斎橋のど真ん中にある秘密基地のようなスタジオにお邪魔してきました。
前もって作ってくださっていたサンプル音に持参した映像を合わせてみたところ、どうしてこんなに~というぐらいぴったりで。まるで映像という2次元で表現されていた漆が3次元に広がったようでした。
青木さんの分析では、自分は慣性の法則などの物理法則を意識して作ってるから、漆が重力で落ちてゆく現象と合うのかも…とのことでした。
お話していても、パリにいたという共通点もあり、不思議なほど感覚の通じ合える方でした。
『Figure』に青木孝允さんの音楽が加わることで、より漆の質感が立ちあがってくるに違いありません!完成が楽しみです!

*special thanks to Sayaka Kato!

Jet Black Space Prjoect1

work
Jan 29, 2019

進んでおります!『Jet Black Space』プロジェクト。
先日はプロジェクトに参加してくださっている京都市産業技術研究所研究員の方々のご厚意により、伝説的職人の柳生健智さんにお話を伺うことができました。

柳生さんは金閣再建時の金箔を貼られた方です。金箔を貼る前には漆下地がしてあるので、柳生さんは実際に漆黒の空間に立たれたことのある方なのです。私がこのプロジェクトを思い立ったのも、柳生さんの金閣でのお仕事に関するドキュメンタリーを見たことに端を発しています。というわけで、ぜひともお話を伺いたかったのです。

柳生さんは78歳になる今も朝の3時に起きて毎日金閣のお守り(維持と修復)に通われています。
金箔という通常室内にしかないものを、屋外で風雨に晒し続けていくことのいかに困難なことか。
いつも一人で中に入り、足利義満と話すような気持ちで仕事をし、観光客が入る朝9時までに仕事を終わらせるそうです。
再建時の漆黒の空間について伺うと、黒漆が磨きあげられた床に足を踏み込む時には落下してしまいそうで恐ろしかったということです。全面黒漆塗りの部屋を作りたいんだと私が言うと、あんたすごいこと考えるねえ~と笑っていらっしゃいました。
録音録画NGだったので目と耳に焼きつけました。

その後、産業技術研究所の大藪氏と竹浪氏とともに光の採り方についてミーティング。
今回は、ものすごーくざっくりした、スタイロフォームに漆を塗ってサイコロ状にしただけの箱を持参しました。
予想以上に暗い。でも、なんだか凄いです。漆って本当に、圧縮された黒なんだと思う。

で、中に入った感じを見るため、かぶってみる⁇
笑ってしまう画です。でも、かぶるとみんななかなか出てこないんです。
うお~漆くさいとか、ほおほおとか、へ~とかいいながらずっとかぶってる。部屋の電気を点けたり消したりしました。かぶっている状態なので、下からの光しかないのですが、下3分の1ぐらいまで漆の壁面がぼんやり見えてきれいでした。

漆黒の闇というけれど、 ある程度光があって面の反射がないと漆だということはわからない。にじむ光に漆らしさがあるようで(艶消しの場合)。漆黒を表すには光が必要だというのはとても面白いと思ったのでした。

 
この結果を東京の建築家にフィードバックして、さらに建築家側でも送った漆パネルを使って模型で光の採り方を検討してもらうことになりました。そして京都チームでも、引き続き模型サンプルにて形状検討を…続きます。

【企画:漆芸】戸田蓉子【建築設計】佐藤研也 (studio Niko/東京藝術大学COI拠点)
【認知科学スタディ】竹浪祐介 (京都市産業技術研究所)

内部総黒漆仕上げ 移動組み立て式茶室空間 1800㎜×1800㎜×1800㎜

金閣寺の金箔張り替えに携わった職人の「全面に黒漆を塗りこめた空間に立った時、上下左右がわからなくなり自分がどこに立っているのかわからないような不思議な感覚を覚えた」という言葉から着想を得た。これは金閣三層目「究竟頂」内部の金箔を貼る前の、六面すべて漆黒の状態を指した言葉と思われる。

「漆黒」という色の価値は日本独特の美としてその深みや艶により周知されている。昭和30年代から合成漆器なるものが登場し、現代では精度の上がったバイオプラスチックが開発されている。では命ある漆の木の樹液、生き物である本当の漆の質感とは?漆の美とは?漆の力とは?漆芸に携わる者として「本当の漆黒」の価値を再構築し人々に認識してもらう必要があると切に感じ、当プロジェクトを企画した。
また、この漆黒の面が感覚器官に与える効果を現代の認知科学の見地から検証解明することをも、このプロジェクトでは目的とする。作品として制作された漆黒空間はまた、実験装置としても機能する。

建築的見地からは、現代のデジタル技術のデータでもって作った小屋に、伝統的な手仕事で魂を込めた漆の壁を組み込むことで空間を完成する。塗るという行為は空間を変容させることである。
漆黒の中で、自分自身というミクロコスモスと対話し、また自身を包む宇宙というマクロコスモスへと思いを馳せるような、精神にはたらきかける空間をも目指す。なぜなら漆は、縄文時代の遺跡から出土する神事や呪術に用いられた朱塗りの櫛や道具、中世の仏教寺院の什器根来を見てもわかるように、歴史の中で人間の精神に寄り添ってきた素材だからである。
さらに、日本には古来から、神を移動させるという独特の感覚がある。それは式年遷宮や、仏像を移動する際に魂を抜いてまた戻すという行為に顕著である。私たちは現代においてこの漆黒の中にある何を運ぶのだろうか。空間をたたみ、またどこかの地で空間を再現する度に。この空間に入ってくれるビジターとともにそれを考え作り上げていくことができれば、それにまさる喜びはないと考える。

【協力】木村宗慎(茶人、作家)
【制作協力】@カマタ

“Jet-black space project” (temporary title)

Direction, Lacquer: Yohko Toda
Architectural design: Kenya Sato 〈Studio Niko〉
Study of cognitive science: Yusuke Takeura

Mobile collapsible tea room/ Interior finished with Kuro Urushi (black lacquer)

“When I stood in the space covered with Kuro Urushi, I suddenly felt disoriented and was overcome with a mysterious sensation of losing where I was standing. ”

This work is inspired by the words of a gilding artisan who was engaged in the restoration of Kinkakuji Temple. It is assumed that this artisan worked on the third level called The Cupola of the Ultimate (Kukkyou-chou) and the words describe the room coated in jet-black Urushi before gilding the walls and ceiling completely with gold leaf.

First, in this work, we will study the effects of black walls on the eyes from the aspect of contemporary cognitive science. Then applying the knowledge acquired, we plan to build a space where one can re-experience the awe of the artisan mentioned above. We will utilize the latest digital technology to design and construct the tea room. The construction will be complete with the integration of the walls finished with utmost care and traditional craftsmanship using Urushi. The final touch with black Urushi breaks down the physical boundaries enabling a metaphysical sense of ascension.

As we can see from examples of red Urushi lacquered combs and magico-religious instruments from the Jomon-period, and negoro-ware and furniture from medieval Buddist temples, Urushi has been in close relationship with the human psyche from the earliest times. This space aims to influence the mind through encouraging self-dialogue, interacting with the inner micro-cosmos and to expanding one’s consciousness to the surrounding universe as the macro-cosmos.

From the ancient times, Japan has a unique custom of periodically moving around objects of worship. The Shikinen Sengu (Ise Shrine transfers their deity to an entirely new shrine every 20 years) and moving a Buddha statue (they first extract the soul and then after, restore it) are good examples. So in this endeavor, what can I transfer to this world every time I collapse and erect this jet-black space? I am excited to contemplate and co-create this with the visitors.

cooperation:Soshin Kimura(tea master,essayist)
Production cooeration:@Kamata

制作中1『器界 Kikai』

work
Jan 28, 2019

『0.1.1.2.3.5.8.13.21.34.55.89 』
『 dN /dt=rN(1-N/K) 』
『y=ex』』
『くはし』

仏教用語で生きとし生けるものをいれるこの世界を「器界」と呼ぶ。

木地作りから塗りたて、あるいは蒔絵の磨き上げまで段取り通り入念に仕事をしていく、つまり人間が完全にコントロールするのが漆芸である。もちろん乾くのは漆自身の力であり、季節の温度や湿度によって乾き方や艶は影響を受けるのだが、どれも微細な変化である。そこに何らかの人間の手の届かない要素を加えたいと考え、数学を用いた作品である。
自然界に存在する関数を軸として用いつつ、最終的には人間(私)の感覚でもって再構築し作品として仕上げている。artという言葉のもつ「自然の模倣」「人為」という意味合いへと繋がってゆく。

種々の技法を用い、すべて漆の黒のヴァリエーションで仕上げた。漆という素材に拡大鏡的にアプローチすることで、漆黒の深さと豊かさが伝わるように。
 
 
『 0.1.1.2.3.5.8.13.21.34.55.89 』
世界を記述する一つの方法である数学の法則にのっとって12の器(0を含む)を重ねた。
0.1.1.2.3.5.8.13.21.34.までは同じ一本の欅の木から削りだされている。

↑木地の状態です
Freshly carved vessels up to 55. Still searching for suitable material for 89

– Slice of eternity –

“0.1.1.2.3.5.8.13.21.34.55.89” *work in progress
“dN/dt=rN(1-N/K)” *work in progress
“y=ex” *planned
“Kuhashi” *planned

In Buddhism, they call the current universe ‘Kikai(器界)’; a vessel containing all living forms.

The art of Shitsu-gei (the making of Urushi lacquer art) is an art of considerable care and precise control over each process beginning from carving the wood base to finishing with lacquer (Nuritate) or the final polish on gold and silver powder gild (Makie). Indeed, as Urushi sets by itself it is influenced by seasonal temperature and humidity changes, but overall the general outcome is more result of the craftsman’s care than nature’s serendipity.

The titles of this series are of mathematical functions found in nature. I mixed in mathematics with Urushi to add elements which are beyond us. I aim to convey the deepness and richness of black Urushi by focusing on fine detail. The pieces are finished in black Urushi with various techniques.

“0.1.1.2.3.5.8.13.21.34.55.89”
The title cues from the Fibonacci Sequence which manifests in myriad forms in nature. The work consists of twelve vessels (including 0) in a consecutive nesting fashion. The first ten vessels (0.1.1.2.3.5.8.13.21.34) is carved from a single zelcova trunk.

漆時間

work
Jan 28, 2019

漆というメディアは、頭の中に描いたものが目の前に現われるまでとても時間がかかります。

まず木地ができあがってくるまでに半年以上(木を乾燥させる期間も必要です)。
そこから漆の作業に入りますが、仕上がりまで当初考えていた時間の三倍かかったなんてことが普通だったりします。
なぜなら、漆を塗るためには入念な下地が必要だからです。少しの面の揺らぎもなく、小さなピンホールもないような滑らかな完璧な状態の面を作りあげることでようやく、漆を塗った時に美しさが立ち現れます。
私が漆は液状のときが一番美しいと感じるのは、粘度の高い液状の漆ならではの、表面張力で張り詰めた究極的に滑らかな面が、そこに現われるせいかもしれません。
ですから、がさがさの面やぴしっと面のできていない素地に塗っても美しくはなりません(大胆さを求めたり、おどろおどろしい漆の表情を引き出すというようなアプローチの作品には有効かもしれませんが)。
下地ができて塗り工程に入ってからも、さらに塗面を平滑にしていくために塗りと研ぎを繰り返します。
その特性ゆえ、下地では面を研ぎ澄まし、塗りでは厚さを均一に塗り、また埃を徹底的に排除するという職人的な技が必要になってきます。

しかもそのすべての一工程ごとに、半日から一日以上漆が乾く時間が必要です。
どんなに人間がファストライフを過ごしていても、漆の乾くスピードは古来から変わらない。
現代の生活の中にいると、時になーんて時間がかかるんだ!と絶望的な気分になったりするのですが、逆に、そんな古から普変のものが自分まで連綿と繋がっていることに安心したりもするのです。

今、ちょうど、そんな漆時間の中にいる制作中のものを次から紹介しようと思います。
きっと発表できるまでにまだとてもとても時間がかかるので!

 

職人さんたちのこと

work
Jan 21, 2019

京都という街にはいろいろなジャンルにハイレベルな職人さんがいらして、漆の仕事をするにも恵まれた環境です。
私は、乾漆(粘土や石膏で型を造形し、その上に漆と土の粉を混ぜてペーストにしたものと布を交互に貼ってゆき胎をつくる)技法と一般的な木地の両方を、作るものによって使い分けています。
乾漆に関しては自身で胎を作ってゆくということになりますが、木地を使うときには木地師さんに挽いてもらいます。
私が頼んでいるのは、京都一の木地師といわれる西村直木さんという方です。
古典的な京都の仕事の最高峰はお茶道具なので、千家十職の中村宗哲さんの木地はじめ、お茶道具のお仕事をたくさんされています。私はお茶道具を作っているわけではないのですが、ありがたいことに数年前に初めてお会いしてからずっと、一緒にお仕事をしてくださっています。

超一流の木地師さんは、超一流の材木屋さんから材木を仕入れます。
ある時、私が大きな木地の予算の関係で悩んでいたときに、もう少し質が低くてもいいから(といっても、日本産欅の中での話です)、手頃な木はないかと材木屋さんに尋ねてくださいました。そうしたらむーっとされて・・・・と笑っておられたことがありました。

京都のお茶道具など格の高い仕事というのは、互いが互いを監視している、とよく西村さんは言います。分業の中で、依頼主はじめ互いが保たなければならない最低限のレベルという共通認識があり、常にそのレベル以上の仕事をしているかと互いを見張っているような関係性の上に成り立っているのだそうです。それが京都の伝統と格式を守り続けているのです。

この西村さんという方は、若かりしころはファッション業界にいらして、イッセイミヤケでお洋服のデザイナーをされていたという異色のキャリアの持ち主でもあります。そこから木地師になられるまでの紆余曲折はここでは割愛させていただきますが、それだけに木地のデザインの面に関しても鋭い感覚を持っておられます。

で、京漆器についていろいろと教わっていたのですが、最近はだんだん文学や音楽の話、ときどきストリップ小屋への憧憬などの猥談もはいりだけど…その文学にしても、古典から現代まであらゆる時代を網羅されていて、しかも読むもんなくなってきたから図書館の全集をかたっぱしから・・・・と日本における小説黎明期の作品群などという超マイナーな分野について色々と教えてくれたり。はたまた音楽についても、武満徹からバルトークの弦楽四重奏やらシューマン一家の話など、本当に幅広く自身の視点を持って語ってくれます。この人の仕事の背後にはこんな世界があって、これだけの知識の上にこの仕事がなされているんだなあと、仕上がってきた木地を見ながらしみじみ思うのです。

もう一人、私がお世話になっているのは上塗り師の番浦さんです。微妙な匙加減など自身で最後までコントロールしたい場合や、うちの師匠直伝の朱塗りをしたい時には自分で上塗りまでします。でも最後の最後、最も表皮の部分の美が作品の完成度を左右するのは間違いないので、黒や溜などそこを上塗り師さんに塗っていただいたほうが完璧に仕上がる時には番浦さんにお願いしています。

番浦肇さんは明治生まれの漆芸家番浦省吾のお孫さん。
私がパリで漆をやることに決め、当時の彼氏と図書館にこもって漆関係の美術書あさって師事する先生を探していた時、この方!と思ったのがShogo Ban’uraでした。しかしさらに調べてみるとすでにお亡くなりになっていたので、再び色々とあたって私の師であるNagatoshi O’nishi先生に巡り合いました。

そんな番浦省吾さんのお孫さんのお宅が、自宅から徒歩5分のところにあることを知ったときには驚きました。省吾さんの建てられたお宅で省吾さんの作品を目の端に入れながら肇さんと話していると、ふっと省吾さんがその辺にいて見守られているような不思議な感覚に襲われたのでした。
そんなわけで、「ばんうらさーん」と呼んでいても、いまだに私の脳裏ではアポストロフのついたBan’uraさんです。
 
京の懐は斯様に深く深く、愉しいのです。
日本の伝統のど真ん中で、最高の職人さん達と一緒に仕事ができることに感謝しています。それに恥じないよう自身の技を磨き、それをもって新しいことに立ち向かいたいと思うのです。